獣医の日記
動物園だからと言って飼育スペースの余裕や遺伝子の多様性を保つためなど、どんどん動物を増やせない場合もあり、当園の一部キツネザルたちも繁殖を制限するため、オスメスを分けて飼育しています。 2016 年のお正月、ブラウンキツネザルのオスが、展示場の地面を掘って仕切り網をくぐり、メスグループに入り込んだことがあり、その 4ヶ月後のある朝、産まれていた赤ちゃんが発見されることとなりました。ところが翌日、赤ちゃんが衰弱して排水溝に落ちそうになっているのを危機一髪で発見、お母さんの母乳が出ていないことがわかり、人工哺育が始まりました。ついた名前は「こしあん」です。 キツネザルの人工哺育は初めてのことで、ミルクは犬用と人用をブレンドして、ちょうどよい配合が見つかるまで試行錯誤しました。ミルクの回数も、離乳のタイミングも、離乳食も、わずかな資料と、ほかの動 物での経験と、勘を手掛かりに、半分手探りでしたが、もともと体が丈夫だったのでしょう、何とか無事に育ってくれました。 今は、顔をすっかり忘れてしまった産みの母たちと同居してキツネザルらしく生きていけるよう気長に練習中です。われわれ育ての父、母たちはわが子の自立と親離れ、子離れが寂しくてたまらないのですが、見守りながら応援していきます。