ホンドタヌキ

英名:Japanese Raccoon Dog
学名:Nyctereutes procynoides viverrinus
分類:脊索動物門 > 哺乳綱 > 食肉目 > イヌ科

ホンドタヌキの特徴

ホンドタヌキ(学名:Nyctereutes procynoides viverrinus)は、日本に住んでいるタヌキの仲間です。体の大きさは、体長が50〜60センチメートル、しっぽの長さが15〜20センチメートルくらいで、体重は4〜8キログラムほどです。

顔が丸くて、足が短く、目のまわりには黒い模様があり、毛の色は灰色や茶色っぽくて、季節によって変わります。冬になると毛がフワフワになり、まるくてかわいい姿になります。また、タヌキの足には小さい肉球があります。

ホンドタヌキの暮らし

どこに住んでいるの?

ホンドタヌキは、日本の本州、四国、九州とその周りの島に住んでいます。山や森、畑、草原、街の近くなど、いろいろな場所で暮らすことができます。

タヌキは、地面に穴を掘って住んだり、岩のすき間や倒れた木の下を巣にしたりします。一つの家だけではなく、いくつかの寝る場所を使い分けることもあります。最近では、公園や住宅街の近くでもタヌキを見かけることがあり、人間のそばで暮らしていることもあります。

何を食べるの?

ホンドタヌキは、いろいろなものを食べる雑食の動物です。住んでいる場所や季節によって食べるものが変わります。昆虫(カブトムシやバッタ)、ネズミやカエル、柿やブドウ、どんぐりなどの果物や木の実、トウモロコシやイモなどの農作物も食べます。川や池にいるザリガニやカニ、鳥の卵なども食べることもあります。

どんなふうに子育てするの?

ホンドタヌキは、オスとメスがペアになって家族を作ります。赤ちゃんが生まれるのは2月から4月ごろで、妊娠期間は約2か月です。一度に4〜6匹くらいの子どもが生まれます。

生まれたばかりの赤ちゃんは目が見えませんが、10日くらいで目が開きます。生後3〜4週間すると巣穴の外に出て遊び始めます。タヌキの親は、オスもメスも協力して子どもを育てます。

子どもたちは4か月くらいで独り立ちしますが、寒い冬が来るまでは家族と一緒に過ごすことが多いです。次の春には大人になり、新しい家族を作ることができます。

「タヌキ寝入り」ってどういうこと?

「タヌキ寝入り」という言葉は、「本当は起きているのに寝ているふりをする」という意味で使われています。この言葉は、タヌキが危険を感じたときに「死んだふり」をすることから生まれました。

タヌキは、敵に見つかったときに逃げられないと、じっと動かずに倒れたように見せかけることがあり、敵が「このタヌキはもう死んでいる」と思って興味をなくすのを待つ作戦。敵がいなくなったら、すぐに起き上がって逃げていきます。この習性から、日本のことわざや言葉にも使われるようになりました。

タヌキは冬眠するの?

ホンドタヌキは、クマのような本当の冬眠はしませんが、寒い冬には「冬ごもり」といって、あまり動かずに過ごします。

冬の前にたくさん食べて体に脂肪をためて、寒い時期を乗り切る準備をします。特に雪が降ったり、とても寒くなったりすると、何日も巣穴から出ずにじっとしていることもあります。でも、気温が上がるとまた動き始めます。寒い冬にはタヌキがいくつかの巣穴を使ったり、一緒に過ごしたりすることで、寒さをしのぐことができるのです。

ホンドタヌキは、日本の自然の中でたくましく生きている動物です。もし森や公園でタヌキを見かけたら、そっと見守ってあげましょう!

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VOL.76 獣医の日記

この冬頃から、タヌキのげんまいがしばしばおかしな歩き方をするようになりました。また、誰も触っていないのに自分の腰や脚に向かって怒る場面もみられるようになり、検査したところ脊椎(背骨)が変形していることが分かりました。病変は脊椎に現れますが、脊椎から脚に向かう神経にも影響を与えるため、足腰の動きに異常が出たとみられます。一見若々しく毛艶もよいですが、こう見えてこの春で10歳。一般的な飼育下での平均寿命に到達してしまいました。実は両目とも白内障にもなっています。ダメージを受けている神経を修復する薬のほか、痛み止めも量や種類を検討しながら与え、できるだけげんまいがこれまで通りの生活を続けられるよう試行錯誤していたところ、一時落ちてしまった食欲は回復し、エサの時間に飼育担当を待ちきれずに扉の前で踏むステップも軽やかに戻ったものの、違和感から自分の足を噛んで傷つけてしまい、治療のため入院となりました。 老化は病気ではなく止められませんが、老化による体調の不具合は軽くすることができるものもあります。高齢の動物を飼育するというのは大変なこともありますが、飼育・治療技術が向上した証でもあります。げんまいの様子はXなどでもお知らせしていきますので、暖かく見守っていただけますと幸いです。

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VOL.64 獣医の日記

動物園の動物を診察する際、いつも病院に連れて行くわけではありません。動物の大きさや種類、状態によっていつものグラウンドや寝室で保定したり、その場で麻酔や鎮静をかけたりすることもあります。捕まえて病院に連れて行く場合も、種類によって大人しく抱っこして行けるもの、ケージなどに追い込むもの、素手や革手袋、タオルや麻袋で保定するもの、網で捕まえるものなど様々です。 タヌキのげんまいは母親が巣の引っ越しをしている最中に排水溝に隠していたのを子犬と間違って誤認救護(私達は誘拐と呼んでいます)され、野生に戻せなくなった人工哺育の個体です。ヒトに慣れていますが、一部の職員にベタベタでそれ以外にはそうでもなく、ミルクを飲ませてつきっきりの世話をしたかどうかもあまり関係なく、好みの問題のようです。そんな彼女の毎年の健康診断は、お互いにストレスが無いよう、抱っこしてケージに入れられる、彼女に気に入られた職員が揃っている日に決行することになっています。それでも毎回円満には行かず、臭腺の分泌液を掛けられますが、終わったあとは変わらぬ態度で接してくれるので、次の健康診断もスムーズに出来るよう、普段からちょくちょく顔を出し良い関係を崩さぬよう努めています。

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VOL.53 すっきりしました

今年は5月に急に暑くなったと思ったら、6月7月と梅雨寒が続いていますが、季節は確実に移り変わっており、動物たちも冬毛から夏毛へと換毛しています。 冬毛と夏毛で色や模様がすっかり変わってしまうのはホンシュウジカ。くすんだ焦げ茶色から、オレンジがかった茶色の毛に木漏れ日を思わせる白い斑点模様へと変身しますが、どちらもその季節において森林では目立たない色合いです。 夢見ヶ崎動物公園にいる他の多くの動物たちの換毛は、ふわふわしたダウンコートが抜け、全体的にすっきりした印象になります。ホンドタヌキのげんまいはまさにその典型で、夏と冬では別の動物のようなシルエットです。 キツネザルたちは特に尾がスッキリ、細く見えます。レッサーパンダに至ってはみすぼらしく見えるほど尾が細くなります。 ヤギたちは木の柵や職員手作りの網に体をこすりつけ、抜け毛を自分で落とします。オスのヤギやマーコールは自分の角が届く範囲をわかっているようで、角の先端で背中を掻いていることもしばしばです。 色も体の大きさもあまり変わらないものの、顔周りで大きな変化があるのがロバで、冬毛の時だけ、立派な前髪が現れます。 冬の姿と比べてみると、ほかにもまだまだ発見があるかもしれませんね。

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VOL.46 ピックアップ動物

日本の山林や里山に生息し、小動物や果実などを食べる雑食性の動物で、特定の場所に糞をする「ため糞」の習性があります。日本固有種(日本にしか生息しない)です。外来生物(もともと日本に住んでいなかった動物)であるアライグマやハクビシンなどと食性、生息域などが重なることで生存競争が起き、近年数を減らしています。 当園のタヌキは 2015 年、赤ちゃんの時に子犬と間違って保護されてしまい、野生に戻すことができなかった個体です。野生のタヌキは、ほかの動物が掘った穴や樹木の根本などを巣にして子育てを行いますが、ほかの動物が近づ くなどして巣が危険にさらされていると判断した母親が引っ越しをすることがあります。一度に4頭程度の子どもを産むので、まだ歩けない子どもを一度には運べません。そのため、何度かに分けて新居へ子どもを運んでいくのですが、新居が遠い場合は途中で子どもを適当な場所に隠して進んでいくこともあります。高速道路のサービスエリアのような感じでしょうか。このタヌキは、母親が隠したのが人通りの多い道路わきの側溝だったようで、見つけて集まってきた人間たちに驚いた母親が迎えに来られなくなったか、その前に人間が連れてきてしまったものと考えられます。 昔から日本人の生活になじみがあり、近くにいたはずのタヌキは、今でもおそらく皆さんが思っているより近くにいます。いただけでびっくりされたり、その生態について知られなさすぎていたりするのは、すこし寂しいことだなと感じています。

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