ヤギ

英名:Goat
学名:Capra hircus
分類:脊索動物門 > 哺乳綱 > 鯨偶蹄目 > ウシ科 > ヤギ属

原産地など

ヤギは最も古くから飼われている家畜で、イヌの次にヒトに飼われるようになったといわれています。

ヤギの家畜化は紀元前8000年ごろ、ペルシャなど西アジア原産のベゾアーという野生ヤギが飼いならされたのが始まりと考えられています。

家畜化されたヤギは主に遊牧民によって東西へ広まるとともに、マーコールやアイベックスなどの別の野生ヤギとも掛け合わされ、毛皮、肉、乳などの目的に応じて各地でさまざまな品種のヤギが作られました。

ヤギには紙を食べるというイメージがあるかも知れませんが、これは昔の話で、植物繊維だけで作られていた紙なら消化することが出来ますが、現代の紙には化学繊維が含まれているものがあり、消化できずに苦しむことがあるため、紙は絶対に与えないでください。

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VOL.74 獣医の日記

ヤギのライが亡くなりました。13 歳でした。時々の削蹄や定期的な駆虫、乳房炎などはありましたが、ずっと概ね健康に過ごしてきました。今年の春くらいから少しずつ衰えが見え始め、飼育担当が餌の嗜好性を高めようと色々工夫する中、検査の結果判明した貧血等の治療をしていました。 体の大きさや個体の性格もあるので一概には言えませんが、野生動物と家畜が最も異なる部分のひとつが診療のしやすさです。人間が長い歴史をかけて管理してきた家畜種は、治療のための保定も投薬もうまくやれる方法が確立されていることが多く、ライもご多分に漏れず素直に検査を受け、薬は好物のペレットやふすまと一緒に亡くなる前日までモリモリ食べてくれていました。 動物園の動物の多くは野生種なので、こんなに協力的なものはいないぞ…と自分に言い聞かせ、感謝しながら処置する日々でした。とは言うものの、治療以外での付き合いの方が長く、若い頃の気難しかった姿や、時々甘えて顔を擦り付けてきた仕草など、色々思い出されます。ライ、ありがとう。

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VOL.64 ピックアップ動物

野生種のマーコールやアイベックスなどの他、家畜として古くから世界中で飼育されており、様々な品種があります。 蹄には硬い弾力性があり、木や岩のわずかな取っ掛かりを吸い付くように捉え、うまく登り降りしたりそのまま安定して静止していたりします。 当園の家畜ヤギたちは現在オスのタンゴ、メスのライとユベシの3頭です。 タンゴは血気盛んにスパーリングの態勢を取ったりぐいぐい押してきたりしますが、本気でかかってくることはなく、また相手になる者の顔を見分けており、そうでない者には遊びをねだることもありません。 若い頃は怒りっぽく人を寄せ付けたがらなかったライは10歳を超えて性格が丸くなり、スキンシップを取りたがることも多くなってきました。 ユベシは常にマイペースで周りのヤギやヒトの動きに動じることなく好きなタイミングで好きな場所に行って反芻し、清掃用の竹ぼうきのはねた枝を器用に鼻に突っ込んではくしゃみをしています。 最近職員手作りでやぐらを新調し、まだ慣れないヤギたちの行動が少しずつ大胆になっていく様を、我々も楽しく観察しているところです。

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VOL.58 アニー ありがとう

ヤギのアニーが亡くなりました。10歳と5ヶ月でした。今年に入って緩やかに体力が落ちてきていたものの、最後まで食欲は衰えず、足の力は弱かったものの亡くなる半日前まで歩くこともできました。 あまり自己主張するタイプではなく大人しかったのですが、アニーのいなくなったヤギ舎は寂しいです。アニー、今までありがとう。かわいがっていただいた皆様も、ありがとうございました。

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VOL.55 ありがとう

1月12日、ヤギのモナカが亡くなりました。10歳でした。若くはなかったものの前日までしっかり餌を食べ、いつもどおり日向ぼっこに勤しむ姿を見せてくれていたので、突然のことに職員も驚き、残念に思っています。小さい体ながら、母親として唯一体の大きなタンゴにくっついて過ごすこともできました。今までどうもありがとう。かわいがってくれた皆様にもお礼申し上げます

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VOL.53 すっきりしました

今年は5月に急に暑くなったと思ったら、6月7月と梅雨寒が続いていますが、季節は確実に移り変わっており、動物たちも冬毛から夏毛へと換毛しています。 冬毛と夏毛で色や模様がすっかり変わってしまうのはホンシュウジカ。くすんだ焦げ茶色から、オレンジがかった茶色の毛に木漏れ日を思わせる白い斑点模様へと変身しますが、どちらもその季節において森林では目立たない色合いです。 夢見ヶ崎動物公園にいる他の多くの動物たちの換毛は、ふわふわしたダウンコートが抜け、全体的にすっきりした印象になります。ホンドタヌキのげんまいはまさにその典型で、夏と冬では別の動物のようなシルエットです。 キツネザルたちは特に尾がスッキリ、細く見えます。レッサーパンダに至ってはみすぼらしく見えるほど尾が細くなります。 ヤギたちは木の柵や職員手作りの網に体をこすりつけ、抜け毛を自分で落とします。オスのヤギやマーコールは自分の角が届く範囲をわかっているようで、角の先端で背中を掻いていることもしばしばです。 色も体の大きさもあまり変わらないものの、顔周りで大きな変化があるのがロバで、冬毛の時だけ、立派な前髪が現れます。 冬の姿と比べてみると、ほかにもまだまだ発見があるかもしれませんね。

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VOL.48 獣医の日記

動物への投薬がすんなり行かない場合、原因の一つに薬のにおいがあります。たとえば、シマウマの餌に薬を混ぜると、口をつける前ににおいで気づいて食べてくれないことは削蹄のたびに直面する悩みでもあります。 このたび、ヤギたちの耳や鼻にちょっとしたハゲが見つかりました。皮膚の感染症が考えられたので、軟膏を塗ることにしたのですが、これが結構においます。さわやかなハーブのような香りなのですが、ヤギがどう感じるかはわかりません。かくして、薬を塗り始めたところ、思いのほか当のヤギたちに好評であることがわかりました。ほかのヤギが薬を塗られているところや、私が握る薬のチューブに顔を摺り寄せたり、ずっとにおいをかぎ続けてフレーメン(フェロモンなどを嗅ぎ取った時に上唇をめくりあげて、よくにおいを感じようとする反応)をしたりと好感触です。においは好きでも、捕まえられるのは嫌なので、自分の番になると逃げ、ほかのヤギの番になると寄ってくる…といった妙な状況にもなってきます。 そんな中、ただ1頭ハゲができていないヤギ、タンゴだけは常に他人事のため、薬の塗布が始まると猛然とダッシュしてきて、においをかがせろとばかりに他のヤギと人の間に割り込んできます。おかげでみんな少しずつ毛が生えてきたので、タンゴの「お楽しみタイム」ももうすぐ終わりそうです。

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VOL.42 獣医の日記

ヤギたちの群れの最長老、つくしの姿が見えないことに気付かれた方もいるようですが、実は現在バックヤードで静養しております。以前から加齢により蹄や脚の関節の具合が少しずつ悪くなり、寒い日や天気の悪い日は痛そうにしていることもありました。昨年若い5頭が仲間入りしたのが刺激になったようで、元気にスタスタ歩く姿もよく見られていたのですが、年齢には逆らえなかったようで、この夏は自力で立ち上がれなくなってしまいました。 立てないままでいると、筋肉が弱ってますます立てなくなったり、体重の掛かっている部分が床ずれをおこしたりするだけでなく、消化管の動きが悪くなってあっという間に弱っていくこともあります。そこで、最初は少しでも立っていてもらうためにチェーンブロックという機械を使って、つくしが大した力を使わなくても立ち上がれるようにしていました。すると同時に使っていた痛み止めが効いてきたのか、飼育員たちの励ましのおかげか、やがて機械を使わなくても立てるようになり、少しずつ歩けるようになってきました。さらに、飼育員が実際に使って効いたという、人間用のグルコサミンとコンドロイチンのサプリも与え始めたところ、つくしにも合っているようで、今では調子のよい日は自力で立ち上がり歩き回るまでになり、とうとう10月終わり、ヤギ舎に戻ることができました。ヤギ舎の段差にはスロープを設置し準備万端。がんばってきたつくしを見かけたらぜひねぎらいの言葉をかけてあげてくださいませ。

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VOL.41 獣医の日記

今でも時々「ヤギは紙を食べるの?」とお客さんに聞かれることがあります。昔はそんな歌があったりしたからか、そのように思われていたのかもしれませんが、ヤギの食べ物は草です。しかし、動物園で飼育員から餌をもらっている彼らは、人間がくれるものに警戒心を持たず、食べてはいけないものを口にしてしまうこともあります。ある風の強い日、ヤギのアニーが飛んできたビニール袋を食べてしまった、とお客さ んに教えられました。さあ、どうしよう。口から器具を突っ込みましたがもう出せません。大きいまま腸に運ばれ、腸の細い部分で詰まったら死んでしまうこともあります。短時間で真剣に話し合った結果、手術で取り出すことにしました。とはいえ手術すると消化管(胃腸)に大きなダメージを与えます。たくさんの繊維質を休みなく食べなくてはならない草食動物の胃腸が動かなくなることは、死につながります。 数時間に及ぶ手術で、4つある胃の一つから無事、反芻で少しぼろぼろになりつつも大きな形のままのビニールを取り出しましたが、獣医も飼育員も、アニーもぐったりでした。翌日から餌を食べ、ウンチも出始め、リハビリの運動もしたりして、2週間後には無事退院できました。たまたま今回は運が良かっただけ。人間のそばで暮らしてもらっている動物が、人間のせいで危険な目にあうことの無いよう、皆で気をつけていかなくてはならないと強く思いました。

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