フンボルトペンギン

胸の黒い線が1本あるのが目印。
空は飛べないけれど、泳ぎの名人なんだ。
あたたかい海のそばでくらすペンギンだよ。
フンボルトペンギンってどんな動物?
フンボルトペンギンは、南アメリカのペルーからチリにかけての海岸沿いにすむペンギンです。氷にとざされた南極にすむペンギンとはちがい、あたたかい温帯の地域でくらす、めずらしいペンギン。日本の動物園や水族館でも、いちばんよく見かけるペンギンのひとつです。
見た目のいちばんの目印は、胸にある1本の黒い線(帯)です。同じ地域にすむよく似たマゼランペンギンは黒い線が2本あるので、この線の数で見分けることができます。ここでは、フンボルトペンギンのからだや生態、そして数が減っている現状までを紹介します。
名前の由来とフンボルト海流
「フンボルト」という名前は、ドイツの地理学者アレクサンダー・フォン・フンボルトに由来します。彼の名がついた「フンボルト海流」は、南アメリカの太平洋沿岸を北へ流れる、冷たくて栄養ゆたかな海の流れです。
この海流のおかげで、沿岸の海にはカタクチイワシやマイワシといった魚がたくさん集まります。フンボルトペンギンは、その豊かな海にたよって生きている鳥なのです。生息地がこの海流のそばに集中し、ペルーからチリの海岸に細長く分布しているのも、えさとなる魚が多いからです。
からだの特徴
全長は66〜70cmほど、体重は4〜5kgほどの、中くらいの大きさのペンギンです。背中は黒っぽい色、おなかは白い色をしていて、海の中では上からも下からも見つかりにくい、保護色のような配色になっています。
顔には、目の上から首すじにかけて白い線が馬のひづめ(U字)のように走ります。おなかには、黒い点(斑点)がぱらぱらと散っているのも特ちょうです。
くちばしのつけ根のまわりには、羽のないピンク色の地肌があります。これは、あたたかい地域でくらすフンボルトペンギンにとって、体の熱をにがすための大切なつくりです。つばさ(翼)は飛ぶためではなく、水中を泳ぐためのひれ(フリッパー)になっています。
泳ぎと食べもの
フンボルトペンギンは、空を飛ぶことはできませんが、泳ぎの名人です。つばさをオールのように動かして水中をすばやく進み、深く潜って魚をとらえます。
おもな食べものは、カタクチイワシやマイワシなどの群れをつくる魚や、イカです。すんでいる地域によって、とれる魚の種類は少しずつちがいます。海にもぐってえさをとり、陸で休む——その毎日が、沿岸の海と深く結びついています。
くらしと繁殖
フンボルトペンギンは、たくさんの仲間が集まってコロニー(集団のすみか)をつくって生活します。巣は、グアノ(海鳥のフンが積もって固まったもの)や、やわらかい地面に穴を掘ってつくったり、岩のすきまや洞くつを利用したりします。強い日ざしから卵やヒナを守るために、トンネルのような巣穴に入るのです。
つがいの結びつきは強く、鳴き声でおたがいを聞き分けることができます。1回に産む卵は2つで、オスとメスが交代しながら、40日ほど抱卵します。ヒナは両親からえさをもらい、2〜3か月ほどで巣立ちの時期をむかえます。
換羽(かんう)
年に1回、古い羽がすべて新しい羽に生えかわる「換羽」の時期があります。この間、羽のあいだに水がしみこみやすくなるため、フンボルトペンギンは海に入らず、陸の上で過ごします。海に出られないので食べ物もとれず、それまでにたくわえた栄養で乗りきります。
天敵
海の中では、アシカやオットセイ、サメなどにねらわれます。陸の上では、卵やヒナが、人が持ちこんだネコやイヌ、キツネ、ネズミなどにおそわれることがあります。とくにヒナのうちは無事に育つのが難しく、多くの個体が1年目をこえられないといわれます。
数が減っているフンボルトペンギン
野生のフンボルトペンギンは、数が減り続けています。IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでは、絶滅の危機が高まっている「危急(VU)」の絶滅危惧種に指定され、ワシントン条約でも附属書Ⅰとして取引がきびしく制限されています。
数が減った理由は、いくつも重なっています。魚のとりすぎ(乱獲)でえさが不足すること、漁の網に思わぬかたちでかかってしまうこと、巣の材料となるグアノを人間が持ち去って繁殖地が失われること。さらに、エルニーニョという海のあたたまる現象が起きると、魚がとれなくなって多くのペンギンが命を落とします。自然環境の破壊も大きな脅威で、いま世界各地で保護の取り組みが続けられています。
日本とフンボルトペンギン
じつは日本は、世界でもっともペンギンの飼育がさかんな国です。なかでもフンボルトペンギンは特別で、70をこえる施設で1,600羽以上が飼育されているとされます。これは、世界の生息数のおよそ1割にもあたる数です。
日本でこれほど多く飼われているのは、フンボルトペンギンがもともと温帯の地域にすむ鳥で、日本の気候に合っているからだと考えられています。動物園や水族館では繁殖にも成功していて、身近にペンギンと出会える国になっています。
夢見ヶ崎動物公園でも、フンボルトペンギンに会うことができます。胸の黒い線や、くちばしのまわりのピンク色の地肌など、この記事で紹介した特ちょうを、ぜひ間近で観察してみてください。
参考にした主なサイト
- IUCN Red List「Spheniscus humboldti」: https://www.iucnredlist.org/species/22697817/182714418
- Animal Diversity Web(ミシガン大学動物学博物館)「Spheniscus humboldti」: https://animaldiversity.org/accounts/Spheniscus_humboldti/
- ホシザキ株式会社 ペンギンライブラリー「フンボルトペンギン」: https://www.hoshizaki.co.jp/penguin_island/penguin/html/humboldt.html
- 日本動物園水族館協会(JAZA): https://www.jaza.jp/










































