VOL.76 獣医の日記
この冬頃から、タヌキのげんまいがしばしばおかしな歩き方をするようになりました。また、誰も触っていないのに自分の腰や脚に向かって怒る場面もみられるようになり、検査したところ脊椎(背骨)が変形していることが分かりました。病変は脊椎に現れますが、脊椎から脚に向かう神経にも影響を与えるため、足腰の動きに異常が出たとみられます。一見若々しく毛艶もよいですが、こう見えてこの春で10歳。一般的な飼育下での平均寿命に到達してしまいました。実は両目とも白内障にもなっています。ダメージを受けている神経を修復する薬のほか、痛み止めも量や種類を検討しながら与え、できるだけげんまいがこれまで通りの生活を続けられるよう試行錯誤していたところ、一時落ちてしまった食欲は回復し、エサの時間に飼育担当を待ちきれずに扉の前で踏むステップも軽やかに戻ったものの、違和感から自分の足を噛んで傷つけてしまい、治療のため入院となりました。 老化は病気ではなく止められませんが、老化による体調の不具合は軽くすることができるものもあります。高齢の動物を飼育するというのは大変なこともありますが、飼育・治療技術が向上した証でもあります。げんまいの様子はXなどでもお知らせしていきますので、暖かく見守っていただけますと幸いです。