ワタボウシパンシェ / ワタボウシタマリン

英名:Cotton-top Pinches
学名:Saguinus oedipus
分類:脊索動物門 > 哺乳綱 > 霊長目 > マーモセット科
絶滅危惧種危急 (VU)危機 (EN)深刻な危機 (CR)

Critically Endangered - 野生で絶滅するおそれが極度に高いと考えられています

ワタボウシパンシェって、どんなサル?

ワタボウシタマリン(学名:Saguinus oedipus)は、南アメリカに住む小さなサルです。このサルの一番の特ちょうは、頭に生えている長くて白い毛が、おうぎのように広がっていることです。まるで白いカツラをかぶっているように見えるので、「ワタボウシタマリン」という名前がつきました。

このサルは体がとても小さく、野生ではオスが平均411g、メスが平均430gくらいです。体の長さ(身長)はオスもメスも平均232ミリメートルほどです。

どこに住んでいるの?

ワタボウシタマリンは、コロンビア北西部のせまい地域にしか住んでいません。彼らは、しめった熱帯雨林や、雨の季節とかんそうした季節がある森、一度切りたおされた後にまた生えてきた森など、いろいろな種類の森でくらしています。彼らは環境への適応能力が高く、人間の活動で荒らされた森のはしや、小さく残った森でも生きていくことができます。

森の中での生活

木の上での動き方

ワタボウシタマリンは、ほとんどの時間を木の上で過ごします。彼らは、四つ足で走ったり、飛びはねたりしながら、中くらいの太さから細い枝の上を移動します。彼らが木の上で上手に活動できるのは、手の指にある「爪」のおかげです。人間や他の多くのサルは平たい爪を持っていますが、タマリンのなかまはリスのような「かぎづめ」を持っていて、これが木にしがみついたり、木の間を飛び移ったりするのに役立つのです。

森の中では、低い位置から高さ20メートルをこえる高い場所まで、いろいろな場所を利用しますが、特に森の低い部分を好んで使います。また、木の上だけでなく、地面におりて落ち葉の中を探しまわってエサを探すこともあります。

毎日のスケジュール

タマリンの1日は、エサさがし、休けい、移動をくり返すパターンです。彼らはグループでねむり、夜明けから約1時間20分後に全員が同時にねどこの木を出発します。一日の移動きょりは約1.5~1.9キロメートルです。エサさがしを1時間ほどした後、少しずつ休けいを取り始め、特に昼前後に長い休けい時間をとります。

夕方になると、ねどこの木にたどりつくまで、あまりエサを探さずに、より早くまとまって移動します。これは、夕方や夜に活動するワシなどの猛きん類、イタチのなかま、ネコ科の動物、ヘビといった天敵をさけるためだと考えられています。

何を食べるの?

ワタボウシタマリンの主食は、昆虫、果物、樹液(じゅえき)、そして花のみつです。時には、は虫類や両生類を食べることもあります。体が小さく、食べたものがすぐに消化されてしまうため、彼らは質の高い高エネルギーな食事が必要です。

昆虫探し

昆虫をつかまえる時は、そっと忍びよったり、葉っぱをひっくり返したり、木のわれ目を調べたり、飛びかかったり、素早く地面におりて獲物をつかまえたりします。

樹液(じゅえき)の利用

樹液は、ミネラルや水、その他の栄養源として重要ですが、タマリンはマーモセットのなかまほど樹液を専門的に食べるための体のつくりを持っていません。そのため、彼らは木材を食べる昆虫やネズミのなかまが残した穴や、自然にできた樹皮のきずから流れ出た樹液を利用します。

種を運ぶ大切な役わり

ワタボウシタマリンは、果物を食べて種を遠くまで運ぶ「種の散布者(さんぷしゃ)」としても非常に重要な役わりをはたしています。彼らは、チンパンジーのようなずっと大きなサルが食べないような大きな種も飲みこみ、はいせつします。大きな種を飲みこむことは、腸の中の寄生虫を機械的に追い出す効果もあると考えられています。

家族と子育てのルール

ワタボウシタマリンは、ふつう2~7頭、時には最大13頭のグループでくらしています。このグループは、親の世代、子の世代、孫の世代など、何世代もの家族で作られていることが多いです。

双子を産むことが多い

ワタボウシタマリンのメスは、一度に双子を産むことが多いという特ちょうがあります。妊娠期間(赤ちゃんがお腹の中にいる期間)は約6か月(183日間)です。

みんなで協力して子育て

タマリンの赤ちゃんは、生まれた時点で母親の体重の15~20%もの重さがあります。双子を育てることは、お母さんにとって大変な体力仕事であり、グループ全体で助け合う「共同の子育て」が、赤ちゃんが生きていくために必要不可欠です。

キャリアーはパパや兄弟

生後1週間は、おっぱいをあげるお母さんが主に赤ちゃんを運びますが、その後は、他のグループのメンバー(特にオス)が、赤ちゃんを背中に乗せて運ぶ時間が長くなります。

経験が大切

子育ての経験がないオスやメスは、自分の子どもをうまく世話できないことがあります。そのため、若いサルたちは、自分の家族の赤ちゃんのお世話を手伝うことで、親になるための大切な経験を積みます。

グループのメンバーが協力して子育てをするおかげで、赤ちゃんは外敵から守られやすくなり、生き残る確率が上がります。赤ちゃんを運ぶ世話役は、エサを探したり、移動したりする時間を減らさなければならず、オスは赤ちゃんを運ぶ期間に体重が大きく減ることもあります。

リーダーは一組だけ

ワタボウシタマリンのグループでは、たいてい一組の優位なオスとメスだけが赤ちゃんを産みます。優位なメスは、フェロモンや行動によって、他の大人になったメス(多くはむすめ)が赤ちゃんを産めないようにおさえるしくみを持っています。

ワタボウシタマリンを守るために

ワタボウシタマリンは、世界で最も絶滅の危機に直面しているサルの一つです。主な原因は、彼らの住む森が切りたおされてしまうこと(森林破かい)や、ペット目的の密りょうです。

野生に残っている数は300〜1000頭程度と推定されていますが、動物園などの施設では1800頭が飼育されています。コロンビアでは、地元の人々が環境にやさしい方法で生活できるよう支援する活動が行われており、例えば、森の資源を使わずにすむ代わりの燃料(トウモロコシの皮やココナッツのからなど)を使う調理法の導入などが進められています。また、密りょうを防ぐために、パチンコと引きかえにタマリンのぬいぐるみを提供するプロジェクトも成功しています。

参考文献

  1. International Union for Conservation of Nature (IUCN).
    (2020). Sustainable alternatives help protect the Critically Endangered cotton-top tamarin in Colombia.
    Retrieved from: https://www.iucn.nl/en/story/sustainable-alternatives-help-protect-the-critically-endangered-cotton-top-tamarin-in-colombia/
  2. American Society of Mammalogists.
    (2024). Mammal Diversity Database: Saguinus oedipus (Cotton-top Tamarin).
    Retrieved from: https://www.mammaldiversity.org/taxon/1000824/
  3. Primate Info Net.
    (2024). Primate Info Net Factsheet: Cotton-top tamarin (Saguinus oedipus).
    Retrieved from: https://primate.wisc.edu/primate-info-net/pin-factsheets/pin-factsheet-cotton-top-tamarin/

公式情報『ゆめみにゅーす』の紹介

発行 
VOL.72 ピックアップ動物

中米コスタリカ、パナマの熱帯雨林に生息しています。昆虫や樹液、果物等を食べ、群れで暮らし、生まれた子は母親だけでなく父親や群れ全体で面倒を見ながら子育てをする性質があります。野生では絶滅の恐れが大変高く、生息環境の保護と同時に、動物園など飼育下で数の維持を行うことも絶滅回避のため重要です。 当園のワタボウシパンシェはペアの片割れが死亡して以降、しばらく♂のまつ1頭でしたが、4月22日に千葉市動物公園から♀のダンが来園しました。検疫、お見合いを経て問題なければ同居に踏み切る予定です。穏やかでやや神経質なまつと、移動直後から物怖じせず大物の片鱗を見せるダン、まずは仲良くできることを願いながら見守っていきます。

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