フンボルトペンギン

胸に黒い横線のあるのが大人、子供は黒い線がないんだ。
子供が大好きで、写真をとるときは整列してくれるよ。

英名:Humboldt Penguin
学名:Spheniscus humboldti
分類:脊索動物門 > 鳥綱 > ペンギン目 > ペンギン科 > ケープペンギン属
絶滅危惧種危急 (VU)危機 (EN)深刻な危機 (CR)

Vulnerable - 野生で絶滅するおそれが高いと考えられています

フンボルトペンギンの基本情報

フンボルトペンギンの生態

フンボルトペンギン(学名:Spheniscus humboldti)は、ペルーやチリの海岸沿いに住んでいるペンギンです。寒い地域にいるペンギンとは違い、温かい気候を好みます。フンボルト海流という温暖な海の流れがある場所で生活し、カタクチイワシやマイワシなどの魚を食べています。

フンボルトペンギンはとても協力的な性格で、たくさんの仲間といっしょに暮らします。集団で子育てをしますが、あまりケンカをせず、平和に過ごします。1年に1回、ペルーでは1月、チリでは2月に羽が生え変わる「換羽(かんう)」の時期があり、その間は海に入らず、岩の上で休んでいます。

フンボルトペンギンは泳ぐのがとても得意で、深いときには54メートルまで潜ることができます。ただ、えさを探すときは1分から2分半ほどの短い時間で潜水します。子育ての時期は特に決まっていませんが、4月から5月ごろに始まることが多いです。

フンボルトペンギンの種類と仲間

フンボルトペンギンはペンギン科のケープペンギン属に分類されるペンギンです。「humboldti」という名前は、ドイツの地理学者アレクサンダー・フォン・フンボルトにちなんでつけられました。

野生のフンボルトペンギンは、マゼランペンギンという別の種類のペンギンと同じ地域に住んでいます。ふたつのペンギンはお互いに影響を受けながら共存しています。

フンボルトペンギンの子育てと個体数

フンボルトペンギンは、4月から5月にかけて子育てをすることが多く、1年に1回のペースで繁殖します。親ペンギンは巣を作り、2つの卵を産んで、約40日間かけて温めます。生まれたヒナは、親がしっかりと育て、大きくなるまで守ります。

しかし、最近ではフンボルトペンギンの数が減ってきています。1982年には16,000~20,000羽いたとされていますが、2001年には31,430~34,574羽に減少しました。現在、フンボルトペンギンは「危急種(ききゅうしゅ)」に指定されており、保護活動がとても大切になっています。

フンボルトペンギンの生息地

フンボルトペンギンが住んでいる場所

フンボルトペンギンは、南アメリカのペルーやチリの海岸沿いに住んでいます。北は南緯5度のフォカ島、南は南緯42度のチロエ島までの広い範囲に分布しています。特に「プンタ・サンフアン」は、多くのフンボルトペンギンが子育てをする場所として有名です。この地域の海にはたくさんの魚がいるため、ペンギンにとってはとても暮らしやすい環境になっています。

また、フンボルトペンギンが住んでいる地域の南側には、マゼランペンギンもいます。フンボルトペンギンとマゼランペンギンは、同じ地域でくらしていますが、ときには食べ物をめぐって競争することもあります。

マゼランペンギンとの違い

フンボルトペンギンとマゼランペンギンはよく似ていますが、すこし違いがあります。どちらも温かい気候に適応していますが、フンボルトペンギンは温暖な海流が流れる地域を好み、マゼランペンギンはもう少し寒い地域に住んでいます。

また、巣作りのしかたも違います。フンボルトペンギンは、日差しをさえぎるために地面に穴を掘って巣を作ります。この巣作りの方法が、ヒナを暑さから守るのに役立っています。

公式情報『ゆめみにゅーす』の紹介

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VOL.76 ピックアップ動物

ペンギンといえば南極に生息する動物と思っている人が少なくないかと思いますが、ペンギン全18種のうち南極に分布するものは4種だけで、フンボルトペンギンはその他14種に含まれます。 野生では南アメリカのチリからペルーにかけて、太平洋沿岸地域に生息します。生息地の環境変化等により個体数が減少し、絶滅が危惧されていますが、日本の動物園・水族館では繁殖がうまくいき、よく見られる種類のペンギンとなっています。 日本で飼育していると冬に繁殖活動が活発になり、春先に卵が孵化します。今年の春も1羽が孵化しました。両親は千葉市から夢見に来て3羽のひなを育てたベテランです。全身灰色のふわふわした羽毛で覆われたひなはまだ泳ぐことができないため、両親が食べた魚を半消化状態で口移しにて食べさせます。ひなのいる巣穴の入り口はこの両親がしっかりガードしており、姿はなかなか見られませんが日増しに鳴き声が大きくなっており、元気に成長しているのがうかがえます。早くも時々、短時間巣穴の外に出るようになり、運が良ければ姿が見られるかもしれません。

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VOL.66 ピックアップ動物

フンボルト海流の流れる南アメリカ沿岸に分布するペンギンで、野生では個体数が減少し絶滅が危惧されていますが、日本の動物園水族館では安定して繁殖させることができています。 原則としてつがいになった♂♀は繁殖期が終わってもそのまま関係を継続し、つがいの片方を何らかの理由で捕まえると大騒ぎで攻撃してくるなど、強い絆があります。 中にはその強い絆を1羽だけでなく、複数の相手と結んでしまう個体もいます。ある♂は午前と午後で別の♀と一緒の部屋で過ごし、部屋の外で♀同士がこの♂を巡って大喧嘩をすることもしばしば、♂は知らん顔して止めもしません。 野生動物には彼らのルールがあり非難はできない、ましてや擬人化してその感情を推し量るのは無意味ですが、当事者たちの穏やかではない様子を見ると様々なことを考えずにはいられません。

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VOL.62 獣医の日記

動物園の動物病院には治療で一時的に来る動物だけでなく、入院している動物もいます。長期にわたって入院している個体は展示でお客さんの目に触れる機会はなくなりますが、職員にとってはむしろなじみ深い顔であり、存在感も大きくなっていきます。 先日、10年以上入院していた25歳のメスのフンボルトペンギンが死亡しました。もともと足の裏に趾瘤というこぶのようなものができ、悪化して骨が溶けてしまったことから足の指を切断する手術を行い、また、嘴の変形により他のペンギンのように泳ぎながら餌を取ることができなかったため、展示で暮らしていくことが難しい個体でした。 1羽だと元気がなくなってしまい、つがいのオスが付き添い入院していた時期もありました。餌は魚を手渡しで与えるのですが、時々職員を選ぶことがあり、普段よく世話をしているかどうか、治療などで嫌なことをされているかなど全く関係なく、この人からは食べる、あの人からは一切食べない…という基準が謎のこだわりを見せることもありました。そして、嘴の変形のため食べるのがとても下手なので、魚の大きさ、くわえさせる角度、タイミングなど、かかわった職員を散々悩ませ、工夫させてくれたのはよい思い出です。 動物園の役割は、お客さんから見えない部分の方に多く詰まっていると感じることが多々あります。動物の健康管理もそのひとつです。正解がわからないことも多い中、経験や過去の例を生かしつつ、やはり同じ個体はいないので悩みながらの試行錯誤を続けています。

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VOL.57 ペンギンの換羽

フンボルトペンギンの換羽が始まっています。 地域にもよりますが、夢見ヶ崎動物公園のペンギンの換羽は毎年真夏です。ただでさえ暑い中、換羽は体力を消耗し、苦しそうにハアハアしている姿に少し心配になることもあります。 成鳥は白いお腹に散りばめられた黒い模様の1枚1枚までそのまま生え替わりますが、2年目の幼鳥はこれまでのヒナの色から成鳥の模様に劇的な変身を遂げます。 まったく見た目が変わってしまうので不思議な感じもしますが、本人はもちろん、周囲も気にせずこれまで通り接しています。見た目は大人になっても、行動の端々にまだ成熟しきっていない様子が垣間見え、微笑ましくもあります。換羽が終わると白い部分は1年で一番真っ白になります。

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VOL.55 ペンギン子育て中

昨年12月、フンボルトペンギンのひなが1羽孵化しました。餌の時間になると両親のどちらかがダッシュして早くエサをよこせとねだり、大量の魚を食べ、自分で魚を採れないひなのため、吐き戻して与えています。もう片方は巣穴で留守番ですが、エサ調達担当と留守番担当がちゃんとちょくちょく入れ替わり、負担を公平にしているようです。 巣穴に引きこもってほとんど姿の見えなかったひなですが、1 月下旬に巣立ちしてひょっこり出てきました。鳴き声も大きくなり、動物園が静かな時間帯だと離れた事務所前でも聞こえるほどなので、ぜひ耳を傾けてみてください。

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VOL.50 ペンギンに新顔が仲間入りしました

10 月から5羽のフンボルトペンギンが展示プールに仲間入りしました。バックヤードで産卵・子育てしていた親子と、大洗水族館から来たペアです。展示プールでは、元からいたペンギンたちがヤンキーのように肩を揺らして歩いてきて新入りを取り囲み、ぐいぐい迫っていきましたが、大きなトラブルもなく仲間入りできました。 子育て組は当初2羽孵化したものの、1羽のひなが展示前に残念ながら死亡し、ひなのために頑張り続けた母親も一時体調を崩して危険な状態になり、職員がひなへの給餌を手伝ったり、賢明な治療を行ったり、色々ありました。また、体が小さかったものの展示開始後も元気にしていたもう1羽のひなも、残念ながら内臓の先天的な異常で死亡してしまいました。うまくいくことばかりでありませんが、短い間にあったいろいろな出来事すべてに学び、ペンギンたちの今とこれからに還元していきたいと思います。

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VOL.49 ピックアップ動物

南米チリやペルーのフンボルト海流沿岸に生息するペンギンです。野生では気候変動やネズミ等外来生物などによる生息環境の破壊などが原因で数を減らし絶滅が危惧されていますが、日本の動物園・水族館では生息地とよく似た気候や繁殖・人工育雛技術の高さにより、数を増やして、ペンギンの生理・生態の解明や保全に貢献しています。その増え方は順調、むしろ狭い日本では増えすぎというくらいで、血縁関係を調べて管理し、近親交配を避けています。そのためやたら繁殖させることはできませんが、現在バックヤードで一組の夫婦がひなを子育て中です。一度食べた魚を吐き戻して子どもに与えるため、両親の負担はとても大きく、職員も雛への給餌を補助したり、調子の悪くなった親の治療をしたり、気が抜けません。 年に一度の換羽では、水に入ってエサの魚を食べられなくなるため、事前に食いだめをしてしっかり太り、体力をつけます。春から夏に見られますが、夢見ヶ崎動物公園のペンギンたちは大体7月から8月です。換羽が始まると羽はぼさぼさでまばらになり、汚れて苦しそうな表情になりますが、ご心配なさらず見守っていただければと思います。

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VOL.45 獣医の日記

プールを泳ぐペンギンたちが気持ちよさそうにみえる季節です(一部は換羽中で苦しそうにボソボソになっているかもしれませんが…)。病気やけがなど事情があってバックヤードにいるペンギンにも、小さいプールを用意してあり、毎日気持ちよさそうに泳いでいます。 こちらのバックヤードで長く暮らしている常連のペンギンがいます。趾瘤症といって、足の裏にタコのようなものができてしまい、それが骨に達してしまったためやむなく片足の指を切断したのですが、とても元気です。今は数日に一度、足を保護する靴代わりともなっている包帯を交換しつつ、状態の確認をしています。が、このようなことを数年も続けていると相手も慣れてくるもので、処置のために保定(捕まえて、治療しやすい姿勢を保つこと)していると、上手に体をくねらせていつのまにか人の腕から抜け出す寸前になっていたり、急に振り向いて反撃してきたりすることもしばしばです。さらには、つけたばかりの包帯をそのままの形ですっぽり脱いでしまうことも出てきました。これを脱ぐと、結局また巻かれる…ということにはまだ気が付いていないようで、しっかり足の裏を保護しておきたい我々との攻防はまだ続きそうです。

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