シセンレッサーパンダの生息地と生態

丸い大きな頭に三角の大きな耳。
シマシマのしっぽはフサフサ。竹の葉っぱが大好物なんだ。
レッサーパンダってどんな動物?
ふわふわの赤茶色の毛につつまれた、体の小さな哺乳類です。ヒマラヤ山脈のふもとから、その東に広がる高い山の森を生息地にしています。生息する国は、ネパール、インド、ブータン、ミャンマー、中国。どこもすずしい山の中です。
名前がジャイアントパンダとよく似ていますが、じつは近い親せきではありません。レッサーパンダは、レッサーパンダ科という自分たちだけの科(グループ)をつくっていて、この科の生きものは世界でこのなかまだけ。とてもめずらしい立ち位置の動物です。
レッサーパンダの生息地はどこ?
レッサーパンダがすんでいるのは、ヒマラヤ山脈のふもとから中国の南部まで、東西に細長くのびた山の森です。国でいうと5つ。どこも標高が高く、すずしくて、竹が生えている場所です。
生息地は5つの国にまたがっています
野生のレッサーパンダがいるのは、ネパール、インド、ブータン、ミャンマー、中国の5か国です。
いちばん西がネパールで、東部の山地にすんでいます。そこから東へ進むと、インドのシッキム州、西ベンガル州、アルナーチャル・プラデーシュ州。となりのブータンでも国内の山地に分布しています。さらに東へ行くとミャンマー北部の山地に入り、いちばん東が中国の四川省と雲南省です。
この5か国をつなぐと、西のネパールから東の中国まで、およそ2,500キロメートルの細長い帯になります。ただし、その帯がぜんぶ森でつながっているわけではありません。あいだには畑や道路があり、森はいくつもの小さなかたまりに分かれています。
標高2,200〜4,800メートルの、竹が生える森
レッサーパンダがくらしているのは、標高2,200〜4,800メートルの高さにある森です。富士山の頂上が3,776メートルなので、それと同じかそれより高いところにもすんでいます。
その森は、葉を落とす木(落葉樹)と、一年じゅう緑の木(針葉樹)がまじった温帯の森林です。だいじなのは、木の下に竹がしげっていること。レッサーパンダの食べものはほとんどが竹の葉なので、竹林に生息できる森でないと生きていけません。もうひとつ必要なのが、うろ(あな)のある古い木です。ここを寝る場所や子育ての巣に使います。
気温は一年をとおして10〜25度くらい。雨がとても多く、一年で350センチメートルほど降る場所もあります。すずしくて、しめっていて、竹がある。この3つがそろう自然環境が、レッサーパンダの生息地の条件です。
シセンレッサーパンダとニシレッサーパンダで生息地が分かれます
レッサーパンダには2つのタイプ(種、または亜種)が知られていて、すむ場所が東西で分かれています。
西側にいるのがニシレッサーパンダ(学名 Ailurus fulgens fulgens)です。ネパール、インド、ブータンが生息地で、体はやや小さく、色はうすめです。
東側にいるのがシセンレッサーパンダ(学名 Ailurus fulgens styani)です。中国の四川省・雲南省とミャンマー北部が生息地で、ニシレッサーパンダより体が大きく、赤みが濃く、しっぽのしまがはっきりしています。
夢見ヶ崎動物公園(川崎市)で会えるのは、東側にすむシセンレッサーパンダです。園で見られるあの濃い赤色としっぽのしまは、中国の四川省やミャンマー北部の森で受けついできた姿です。
からだの特徴
体の長さは56〜62cmくらい、体重は3.7〜6kgほどで、ネコより少し大きいくらいです。せなかは赤茶色、おなかと足は黒っぽく、顔には白い色がまじります。目の下には赤茶色のもようがあって、なみだのあとのように見えるのが特ちょうです。
長いしっぽには、うすい色とこい色のしまがぐるりとならんでいます。このしっぽは木の上でバランスをとるのに役立ち、寒いときには体に巻きつけて毛布のようにも使います。
いちばんおもしろいのは、前足の手首にある「第6の指」です。これは手首の骨(種子骨)が大きくなってできたもので、本物の指ではありません。それでも親指のようにはたらいて、ササのくきをしっかりつかむのに使います。するどいツメを持ち、頭を下にして幹を降りられるほど、木登りも得意です。
食べもの
食肉目のなかまですが、食べているものの多くはササやタケノコです。栄養のある葉っぱの先や、やわらかいタケノコをえらんで食べます。そのほかにも果実や植物の根、鳥の卵を食べ、ときには虫や小さな動物を口にすることもあります。
ただ、竹のなかまは栄養が少なく、食べたぶんのわずかしか体にとり入れられません。そのため一日の多くの時間を食べることと休むことにあてて、少ないエネルギーで生きていけるようにくらしています。
くらしとなかま
基本的には一頭でくらす動物です。活発に動くのは朝方や夕方、そして夜で、昼のあいだは枝の上で休んでいることがよくあります。
なかまどうしは、しっぽを立てたり頭を上下にふったり、鳴き声を出したりして気持ちを伝え合います。オスは、しっぽのつけ根にあるにおいの出るところを枝や岩にこすりつけて、自分のなわばりを知らせます。
赤ちゃんと成長
赤ちゃんがおなかの中にいるのは、だいたい130日ほど。冬のはじめに相手を見つけ、春から夏、とくに6月ごろに赤ちゃんが生まれます。一度に生まれるのはふつう1〜4頭で、2頭くらいのことが多いです。
生まれたばかりの子は、母親がつくった巣の中で3か月ほどをすごします。子育てをするのは母親で、赤ちゃんはゆっくりと大きくなり、1才半ごろにおとなになります。繁殖するのは一年に一度です。
寿命(じゅみょう)
野生では8〜10年ほど、長いもので14年ほど生きます。動物園などで人に飼育されると、13年ほど生きることが多くなります。
なかまと分類
昔はアライグマやクマの親せきだと考えられていたこともありました。けれど遺伝子を調べる研究が進み、この動物は自分だけの道を歩んできたなかまだとわかってきています。
レッサーパンダには、大きく2つのタイプが知られています。ヒマラヤのネパールやインド、ブータンのあたりにすむニシレッサーパンダと、中国の四川省や雲南省のあたりにすむシセンレッサーパンダです。シセンレッサーパンダのほうが少し大きく、顔がより赤く、しっぽのしまがはっきりしているといわれます。この2つを別々の種とみるか、同じ種の中の亜種とみるかは、今も研究が続いているところです。
数が減っているレッサーパンダ
レッサーパンダは、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅危惧種に指定されています。世界の野生の数は1万頭を下回るとされ、今も減り続けています。
いちばんの原因は、すみかである森林が切りひらかれていることです。畑や道路をつくるために森がせまくなり、小さく分かれてしまうと、なかまどうしが出会いにくくなります。さらに、毛皮やペットを目当てにした密りょう、まちがってわなにかかってしまうこと、家畜からうつる病気なども数を減らす原因になっています。
森という環境を守ること。それが、そのままレッサーパンダを守ることにつながっています。夢見ヶ崎動物公園(川崎市)でも、身近に会えるこの動物のことを、ぜひ知ってもらえたらと思います。
なぜレッサーパンダは絶滅危惧種なのか(くわしく知りたい方へ)
レッサーパンダは、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅危惧種(EN)に指定されています。野生の生息数は世界で1万頭未満とされ、過去三世代のあいだにおよそ50パーセントも減少したと報告されています。ここからは、絶滅危惧種のレッサーパンダが置かれた現状と、数が減ってきた理由をくわしく見ていきます。
生息地の減少と森林伐採
最大の原因は、生息地である山岳林の減少です。ネパール、インド、ブータン、ミャンマー、中国にまたがる高地の森が、農地の拡大や道路・宅地の開発によって失われています。森が細かく分断されると、レッサーパンダどうしが出会いにくくなり、繁殖の機会も遺伝的な多様性も乏しくなります。こうした生息地の悪化が、個体数の減少に直結しています。
違法な取引とペットの問題
毛皮を目的とした密猟や、ペットとしての取引も大きな脅威です。国際的な取引はワシントン条約(CITES)の附属書Ⅰに掲載され、商業的な取引は原則として禁止されています。それでも、家畜用に仕掛けたわなへの混獲や、犬から感染する病気などが、野生のレッサーパンダを危険にさらしています。
捕食者よりも大きい「人の影響」
野生での天敵は、ユキヒョウやテン(キエリテン)などです。とくに小さいうちは、こうした捕食者や猛きん類にねらわれることもあります。しかし今、この動物を最も追いつめているのは天敵ではなく、人の活動による生息地の変化です。
レッサーパンダを守るために
この流れを食い止めるには、森という自然環境そのものを守ることが必要です。近年は、地域の住民の生活と両立させながら森を保全する、コミュニティ主体の活動が各地で進み、成果を上げています。動物園も重要な役割を担い、飼育下での繁殖や、生態に関する情報の発信、子供たちへの教育を通じて、種の保護を支えています。
日本の動物園でもレッサーパンダは人気者です。その愛らしい姿をきっかけに、生息地でいま何が起きているのかを知ることが、保全の第一歩になります。生物多様性を次の世代へ引き継ぐこと——それは、この動物とともに生きる私たちの責任であり、最も確かな方法なのかもしれません。
参考にした主なサイト
- IUCN Red List(国際自然保護連合)「Ailurus fulgens」: https://www.iucnredlist.org/
- Animal Diversity Web(ミシガン大学動物学博物館)「Ailurus fulgens」: https://animaldiversity.org/accounts/Ailurus_fulgens/
- National Geographic「Red panda」: https://www.nationalgeographic.com/animals/mammals/facts/red-panda
- Smithsonian’s National Zoo「Red panda」: https://nationalzoo.si.edu/animals/red-panda
- Red Panda Network「Predators / Conservation」: https://redpandanetwork.org/











































