VOL.41 獣医の日記

今でも時々「ヤギは紙を食べるの?」とお客さんに聞かれることがあります。昔はそんな歌があったりしたからか、そのように思われていたのかもしれませんが、ヤギの食べ物は草です。しかし、動物園で飼育員から餌をもらっている彼らは、人間がくれるものに警戒心を持たず、食べてはいけないものを口にしてしまうこともあります。ある風の強い日、ヤギのアニーが飛んできたビニール袋を食べてしまった、とお客さ んに教えられました。さあ、どうしよう。口から器具を突っ込みましたがもう出せません。大きいまま腸に運ばれ、腸の細い部分で詰まったら死んでしまうこともあります。短時間で真剣に話し合った結果、手術で取り出すことにしました。とはいえ手術すると消化管(胃腸)に大きなダメージを与えます。たくさんの繊維質を休みなく食べなくてはならない草食動物の胃腸が動かなくなることは、死につながります。 数時間に及ぶ手術で、4つある胃の一つから無事、反芻で少しぼろぼろになりつつも大きな形のままのビニールを取り出しましたが、獣医も飼育員も、アニーもぐったりでした。翌日から餌を食べ、ウンチも出始め、リハビリの運動もしたりして、2週間後には無事退院できました。たまたま今回は運が良かっただけ。人間のそばで暮らしてもらっている動物が、人間のせいで危険な目にあうことの無いよう、皆で気をつけていかなくてはならないと強く思いました。

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