VOL.47 獣医の日記

11月から1月にかけて激しくみられるマーコールの繁殖期の闘争がやっと落ち着いてきました。この時期、発情したメスが現れると、オスは餌も食べずに一日中メスを追いかけまわします。生きるための最低限の欲求のなかで、性欲に完全に支配された状況だというのが見ていてよくわかります。群れの中で強いオスだけが子孫を残す世界なので、弱いオスがちゃっかりメスに近づけば、強いオスはものすごい勢いで追い払いにかかります。それ以前に、繁殖期の前半でそのシーズンの順位付けの闘争が行われ、一番になれなかったオスは後半おとなしくしていることが多くなります。今回、7歳のオス・エルがその前半戦でおそらく山から転落し、足を骨折してしまいました。人間でいえば踵から先の部分で、比較的直りやすい部位ではあるのですが、100kg近い体重を支えながら動き回られてはくっつくものもくっつきません。空気銃で麻酔を打ち、手作りの副木を骨折部分に当て、ギプス用の包帯でぐるぐる巻きにすること1か月半。実はマーコールの骨折の診察は初めてだったので、うまくいくかドキドキしながら毎日診ていましたが、なんとか骨がくっついてくれました。もう少ししたら外に出られます。診療の機会は何度もありますが、何度目でもうまく治るとやっぱりうれしいものです。

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