VOL.80 獣医の日記

4月中旬、ヤギのせいろが数日間展示に出ていなかった期間があることに気付いた方もいるかもしれません。結論から言うと、実はせいろが出産したものの、こどもは死産という残念な結果でした。
出産前日から様子がいつもと違ったため、その日は朝から覚悟して臨み、予想通り出産が始まり…というところまでは良かったのですが、いきみが弱く、赤ちゃんがなかなか出てきません。蹄の向きから逆子なのがわかり、産道のどこかで赤ちゃんがひっかかっている可能性が高かったので、陣痛を促進させる薬を打ち、出産の手助けをすることにしました。なんとか赤ちゃんの向きを変えながらせいろに合わせて引っ張り出し、必死に呼吸の手助けを行いましたが、残念ながら赤ちゃんはおなかの中で亡くなっていたようでした。その後、ほどなくして2頭目の出産が始まり、こちらは手助けせずともスムーズに産んだのですが、こちらも残念な結果でした。不幸中の幸いで、せいろの体は順調に回復し、また群れに合流することができています。
出産にはおめでたいイメージがつきものですが、赤ちゃんも母親も命がけです。実際、母子のどちらか、あるいは両方が命を落とすこともあります。また、赤ちゃんは突然生まれてくるものではありません。母親が身体に大きな負担と命の危機を抱えながら妊娠と出産を乗り越え、ようやくのご対面となります。産まれても安心はできません。様々な理由で、赤ちゃんは成長した個体よりもずっと命を落としやすい生き物です。そして程度の差はあれ、ヒトも動物も同じです。
これから始まる出産シーズン、職員たちがピリピリしているように見えるかもしれませんが、そういうわけです。

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